2020年8月

境界

 秋田県横手市(出羽国平鹿郡)と岩手県北上市(陸奥国和賀郡)を結ぶ街道は、郡名の頭文字を合せて平和(ひらわ)街道と呼ばれている。日本海側の海産物や南部地方の特産品などが運ばれた。県境付近では、境界を越えた共通の生活圏域で、人々の密接な交流があったという。岩手県西和賀町の道路沿いに、身丈約5mの大きなワラ人形が立っている。両手を広げ腰に2本の刀を挿して道路に向かって。同町「白木野人形送り」のワラ人形がモデルになっているという。年に一度春に、新しいワラを持ち寄り、地域の安全を願って住民の方々による衣替えがおこなわれているそうだ。

米どころ

 西和賀町と接する秋田県横手市は、県内でも有数の米どころ。「油揚げまんま」は、油揚げにもち米を詰めて、ざらめを使い甘辛く煮たもので、甘さを強調した味が、もち米にしみ込んでもっちりとした食感。田植えの時期や農作業の合間に食べられてきたという。自然風土が創り上げた昔から伝わる郷土料理の一つだ。

鹿島様

 田園風景が広がる中、道路沿いに雨避けの屋根をかけ、2体のワラ人形が並んで立っている。

 ワラ人形を作って、集落の境界に立てたり、川に流したり、焼却、解体して集落の人々の災厄を祓う習俗がある。集落の外に災厄を追い出し、疫病などの災厄が集落に入るのを防ぐ事や、五穀豊穣・子孫繁栄など様々な意味を付与して願いを託すのだ。
横手盆地の南部湯沢市岩崎地区には、三つの町内(緑町、末広町、栄町)の約4mのワラ人形「鹿島様」がある。力を誇示するように境界に置かれている。

 材料の稲ワラは、秋の収穫時に茎の長い青いワラを蓄えていたが、農業の機械化が進み、稲ワラ集めも難しくなっている。また、ワラ仕事も急速に少なくなってきた。年一回の衣替えには、ワラ細工の技術が伝えられていく。御幣を立て、ローソクを灯し、御神酒を供えて祈願する。一年の息災を願う人々の拠り所となっている。秋田県には多くの鹿島様があり、集落によって大きさや形状などが異なっているという。今年は新型コロナウィルスの感染防止の為、長年受け継がれてきた行事・祭りも中止や縮小を余儀なくされているなか、集落の特色を保ちながら、伝承は重ねられていくのだ。

虫おくり

 虫送りは、農作物に病気をもたらす害虫を駆除し、豊作を祈願する伝統行事。大勢の人々で賑やかに行われているというのが奥津軽・五所川原の「虫と火まつり」。今年の「虫」が、つがる市木造亀ヶ岡考古資料室に展示されていた。龍蛇型の虫は、木彫りの頭に胴はワラで作られている。田植えが終わった頃に若者達が村中を担いで練り歩き、大きい方は村外れの一番高い木の枝にかけ、小さい方は水路に流し祈願していたという。長い歴史の中で変化しながら、現在の行事が行われている。「虫」を御焚き上げ、昇天させることで、五穀豊穣を祈願する。

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