VICの窓から

2022年3月

ノサかけ

 南陽市の吉野川沿いの山側に、ノサ(藁で作った幣)がかけられていた。ノサかけは、藁で作ったノサに、餅や干柿、昆布、するめなどをはさみ、山の神の境内の木にかけて一年の豊穣を祈願する行事。山の神は村落共同体の神。今年は積雪が多くて正月のノサかけは大変だった事だろう。山の幸が生活を支えた頃の習慣(ならわし)が、今日に受け継がれていることを改めて知る。

栗子トンネル

 福島県相馬市を起点として、秋田県横手市で秋田自動車道に連結する東北中央自動車道。福島~米沢間は2017(平成29)年11月4日開通した。
県境にまたがる栗子峠を貫通する8972mの栗子トンネル。明治時代山形県初代県令三島通庸(みちつね)は、それまでの板谷峠越えの板谷街道ではなく、栗子峠越えの新道を建設した。万世大路である。栗子トンネルはその時掘削された栗子隧道から4世代にわたる歴史を刻んでいる。

地震

 東日本大震災と原発事故から11年がたったばかりの3月16日午後11時35分前後、福島県沖を震源とする2度の地震が発生。震度6を観測した宮城・福島県では津波注意報が発表され、避難指示が出された。あの日を思い出した人も多かった事だろう。死傷者も多く出ている。広い範囲で道路に亀裂が入り、建物が倒壊したり、停電・断水など被害が出た。東北新幹線や東北自動車道などが貫く福島県中通り地域。県境近くの宮城県白石市で脱線した東北新幹線は高架橋等にも被害が出て、復旧に時間がかかる見通しという。

松川浦

 震度6強を観測した相馬市。北に新地町、山元町、亘理町と続く海岸線は、東日本大震災で大津波による甚大な被害をもたらした。南には、南相馬市、飯館村、葛尾村、浪江町、双葉町、大熊町、富岡町など、原発事故による帰還困難地域がある。松川浦に向かう町並みには、ブルーシートで覆う建物が多く、漁港の岸壁や設備も破損している。松川浦は水路が太平洋につながっている。松川浦大橋が架かるが、震災の影響で通行止になっていた。

 松川浦漁港に船が帰ってくる。人懐っこいコブハクチョウが集まってきた。

 原発事故の影響で、自粛を余儀なくされてきた福島県の漁業。試験操業は令和3年3月で終了している。出荷制限魚種を除き、全ての魚を水揚げの対象としており、安全を確認する検査も継続して行われている。ふるさとの海。地元で生きる人達。東日本大震災から11年の頑張り。相馬全体の復興への願いは、地元の食材を食べてもらいたいという思い。浜のにぎわいを取り戻すため「浜の駅 松川浦」が整備された。今日は特産の青のり、なかなか出回らない珍しいミミイカ。小さなヒイカが並んでいた。ようやく本格操業に向けた水揚げの増加が見込まれるようになった。原子力発電所の処理水放出について国内外への安全性の理解や風評対策の検討が続けられている。

「みちのく潮風トレイル」は、青森県八戸市から福島県相馬市までの太平洋沿岸をつなぐ道。東北の復興の歩みにつながる道はつづいている。

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